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2009年度

「泣いた」「笑った」「感動した」図書館職員が読書体験の中から紹介する珠玉の1冊

『生きかた上手 全3巻』日野原重明/著(ユーリーグ)

この本は、悲しみを乗り越えたい時、健やかであるためにはなど、人生の岐路に立った時、どうよく生きるかについて書かれた本です。生きるということは、耐えることであり、ゆるすことであるなど様々な生き方のヒントが散りばめられた人生の羅針盤となるすばらしい本です。ぜひ一読ください。


『天国の発見 上・下』ハリー・ムリシュ/著(バジリコ)

天界発のミッション・インポッシブル。堕落した地上から「モーゼの十戒」の刻まれた石板を奪還すべし。複雑な生い立ちのプレーボーイ天文学者と、名家の御曹司が出会ったのも、すべて計画への布石。途中、その天文学者に天国を発見されそうになった時の反応があっぱれ。威厳も何もあったもんじゃない天界の面々です。冒頭から連中の俗物さは明らかでしたがね。イデオロギー問題や歴史上のエピソードをふんだんに散りばめて読者の知的好奇心をくすぐりつつ、その中身は娯楽大作。ミッションの内容からして、すでにインディー・ジョーンズののり?(は)


『からだをいたわる服づくり』
森南海子/著(情報センター出版局)

体が不自由なときも、動きやすく、扱いやすく、そしてすてきな服を着ていたい。そんな願いを、ちょっとした手直しや工夫でかなえます。使う人を思って作り、使いごこちを聞いては作りなおす。布と向きあうひたむきな思いがあふれた1冊です。読んで作ったものが、だれかの助けになりますように。(て)


『魂の殺人』A.ミラー/著(新曜社)

もう20年程前になりますが、子どもが1歳になって職場復帰をした頃、『魂の殺人』という本に出会いました。まだ、児童虐待という言葉があまり知られていなかった時代に、親がどう子どもを傷つけ、傷つけられ育った子どもが大人になってどんな感情を持ち、行動をするのかを精神分析家として携わった多くの具体例をあげて記しています。はじめての子育てに不安だった私が、子どもとどう接すればよいのかを教わった本です。(N)


『語りかける花』志村ふくみ/著(人文書院)

人間国宝でもある染色家、志村ふくみさんのエッセイです。志村さんは植物染料による染織を手がけているのですが、「花が咲く直前の桜の皮を煮詰めて染めると美しい桜色に染まる、それは花びらだけが桜色なのではなくて、桜の木全体で色を蓄えているからだ」という話を本の中でも記しています。この話は大岡信氏が言葉の世界にからめて文章にし、教科書にも載っていたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。志村さんの文章は自然に対する思いがにじみ、やわらかく心に染みます。あわせて『一色一生』志村ふくみ/著(求竜堂)もお楽しみください。(ち)


『大地の子』全3巻 山崎豊子/著(文芸春秋刊)

ドラマ化されており、ご覧になられた方も多いかと思います。いったん読み始めると、ぐいぐいと最後まで読んでしまう面白さはさすがです。そして読了後は、争いや戦争が引き起こす人間の醜さ、恐ろしさに愕然とします。ずいぶん以前に読んだ本ですが、今でも小説の中の一場面が浮かんできては、胸が苦しくなる思いをします。


『事象そのものへ!』池田晶子/著(法蔵館)

2007年2月、池田晶子は46歳の若さでこの世を去った。「この人こそ新しい世代の真の哲学をする人」との激賞と期待の中で。科学、存在論、言語など、現代哲学の主要なテーマを縦横無尽に論じ、「哲学」の本質を難渋な表現に溺れることなく、自らのことばで平易に語り続けた人。「考える」という快楽を教えてくれる初期エッセイ集です。


『空の名前』高橋健司/著(光琳社出版)

いままで見たことのないような空の写真が、名前と説明文を添えて並べられ、雲や雨にこんなにたくさんの種類があるのかと驚いてしまいます。爽やかに晴れ渡った空をみあげて、この本を参考にしながら、あの雲の名前は何だったかなとぼんやり考える。なかなか楽しい休日の過ごし方ではないでしょうか。姉妹編として、『宙(ソラ)ノ名前』林完次/著(光琳社出版)があります。こちらは夜の空を眺めるのに最適です。(な)


『深夜特急』(全3巻)沢木耕太郎/著(新潮社)

「インドのデリーからイギリスのロンドンまで乗り合いバスで行けるか」そう思い立った26歳の著者は、ユーラシア放浪の旅に出ます。リアリティ溢れる酔狂な旅の記録は、読むものを惹きつけ旅人に変えます。‘86年刊行の旅のバイブル本ですが、今も色褪せることはありません。この本を片手に、著者の辿った道を歩く人も多いとか。全3巻(文庫では全6巻)読破後は、昨年出版されたシリーズの総決算『旅する力―深夜特急ノート―』(新潮社)をどうぞ。(t)


『数学者の言葉では』藤原正彦/〔著〕(新潮社)

『国家の品格』で品格ブームを作った(というか節操なく真似された)著者の初期エッセイ集です。この頃は数学者としての視点が強いですが、読ませる力は今も変わっていません。数学者エッセイストの二大巨頭(と、私が勝手に決めている)のもう一人、矢野健太郎と読み比べてみるのもおもしろいと思います。(P)


『八股(パクー)と馬虎(マフー)』安能務/〔著〕(講談社)

著者は独特の中華思想論のイメージを読者に伝えるためにこの本を書いています。商から周への王朝交代の時代から、現代までの3000年間にわたる中国の歴史を扱った『封神演義』『春秋戦国志』『中華帝国志』と続いた全10冊のシリーズの最終巻にあたります。歴史上の登場人物を魅力的に肉付けし、中国史で有名なエピソードを独自の解釈でつづったこの小説は、中華の思想と権力の変遷を分かりやすく伝えてきます。(い)


『ファーブル昆虫記 完訳 10』ファーブル/〔著〕(岩波書店)

受験の苦しさはいまだに夢に見るほどですが、知る喜びというものがそこにはありました。その頃読んでいた昆虫記ですが、間に織り込まれるファーブルの回想記は苦学の日々を語りながらも明るい詩情にあふれています。18歳、師範学校を卒業し任地の指定を待つ数週間。ファーブルは学校にとどまりなおも勉強を続けるのでした。「私を好きなように使って下さい。お望み通りにして下さい。ただ勉強さえ出来たら、後はどうでもいいです。」(m)


『大地』(全4巻) パール・バック/作(岩波書店)

著者はこの作品でピューリッツアー賞とノーベル文学賞を受賞しています。物語は19世紀の清朝末期の中国を舞台に貧しい一介の小作農の主人公 王龍(ワンルン)が大地主になるまで、また、その一族の壮大な大河小説です。私は中学生の時に読んだこの一冊の本で小説の楽しさを初めて知りました。是非、中学生には読んでもらいたい一冊です。歴史の勉強にもなりますよ。(T)


『名画の言い分』木村泰司/著(集英社)

古代ギリシア美術からルノワールまで、歴史上の名だたる名画美術品を西洋美術史の視点から紹介・解説した本で、通読すると西洋の歴史を俯瞰しているような不思議な気持ちになります。キューピッドと天使は全く別ですよ、フランス人の前で古い絵の多いルーブルはつまらない、印象派絵画の多いオルセー美術館の方が好きと言うのは、自分は無教養であると言っているようなものだからお止めなさい。そんなトリビアな話題を交えながら、西洋美術は決して感性で見るものではなく、その時代時代の歴史・政治・宗教観・思想・社会背景などの膨大な量の知識をもって読み解くものであり、それを可能にする努力こそが教養なのだと教えてくれる書物です。読後、自分の浅学・無教養に気づいた私は、少しでも教養を深めたいと奥付に紹介されている徳島県鳴門市の「大塚国際美術館」に早速足を運びました。うーん、すごかった。(た)


『大はずれ殺人事件』クレイグ・ライス/著(早川書房)

シカゴ社交界ナンバーワンのモーナが「私が殺人をします。あなたがそのしっぽをつかむの」と言い、ジェークはその賭けにのります。翌日、彼女が示した条件の殺人がおこります。酔いどれ刑事弁護士マローンにお人よしのジェイクと、とんでもない暴走運転をする妻のヘレン。古きアメリカのシカゴを舞台に、酒とともに、殺人を巡るドタバタが始まります。殺人事件なのに滑稽で、でも洒落ていてユーモアもたっぷりですが、ちゃんと謎解きもあります。ちなみに3人が最初に登場する作品は『時計は三時に止まる』(東京創元社)です。(C)


『思考機械の事件簿 』(全3巻)
ジャック・フットレル/著 (東京創元社)

ここに紹介します「思考機械」ことオーガスタス教授は”全て物事は論理で解決できる”と、豪語します。なにしろ、チェスの経験もなしにルールを学んだだけで、世界チャンピオンに挑戦し、論理思考によって、みごとに勝利。どんな難解な事件も話を聞くだけで、即座に手がかりをつかんでしまいます。少々荒唐無稽なところもありますが、むしろ、その多少無理なところも楽しんでいただけるのでは。「探偵小説」の醍醐味を満喫できる一冊。(風)


『エコ・コモノ』平田美咲/著(青山出版社)

みなさんはお菓子を食べながら「このパッケージかわいいのに捨てるのはもったいないなあ、なにかに使えないかな」と思ったことはありませんか?私は去年の春にこの本に出会いました。どれもこれもアイデア満載で次々とチャレンジしました。スナック菓子の袋がブックカバーやカードケースに大変身!かわいいお菓子を見つけると包み紙ほしさに買ってしまい、中身はしっかり身につきました。今年も見本を江坂図書館で見ていただけます。(に)


『嫉妬』(世界の文学 集英社版 25)
アラン・ロブ=グリエ/著(集英社)

これを読んで以後、ヌヴォー・ロマンと称される作品をもとめて古本屋巡りをすることになりました。時間の流れに沿って展開する筋、輪郭のはっきりした作中人物、人間心理を見透かす分析や描写といった小説の伝統を無視して、妻の行動に不審の念を抱く夫が密かに妻を監視する。延々と続くその記録は真実なのか、妄想の産物なのか。これを読んで更にヌヴォー・ロマンを、という方にはノーベル賞作家クロード・シモンの『フランドルへの道』(白水社)を、映像作品ならロブ=グリエのシナリオ、アラン・レネ監督の映画「昨年マリエンバートで」をお薦めします。(K)


『柳生三天狗』 山岡荘八/著(光文社)

柳生といえば柳生十兵衛。けれど山岡文学で脚光をあびているのは、その父宗矩さん。大河ドラマ的な重々しさを想像しないでいただきたい。ライトでコミカルな、子育て奮闘記とも言える作品がこの「三天狗」。二代将軍秀忠の元、国事にまつわる重職を日々務めているお父さんの足をひっぱるのは、我が子十兵衛を筆頭に、後に三代将軍となる家光らこわっぱたち。時代は変われど、親の苦労も子どものやんちゃぶりも変わらないようである。(は)


『お茶と探偵』シリーズ
ローラ・チャイルズ/著(ランダムハウス講談社)

主人公は、アメリカ南部で小さなティーショップを経営中。この古くて美しい街を舞台に次々と殺人事件が起こり、彼女は素人探偵として調査に乗り出します。謎ときの面白さはもちろん、お店経営の気分も味わえ、愛犬を始め登場人物も魅力的で、街の描写も美しく、様々な楽しみ方のできるシリーズです。(K)


『ぼくと1ルピーの神様』
ヴィカス・スワラップ/著(ランダムハウス講談社)

ゴールデンウィーク中にこの映画をごらんになった方がいらっしゃるかもしれません。「スラムドッグ$ミリオネア」今年のアメリカアカデミー賞作品賞を受賞しました。映画の元になったのがこの本です。ラム少年は有名なクイズ番組で見事全問正解し、史上最高額の賞金を勝ち取りました。警察は孤児で教養のない少年が難題に答えられるはずがないと、不正容疑で少年を逮捕します。なぜ少年は難題に答えられたのか? 様々なインドの姿が見えてくる一冊です。(M)


『かくれ里』白洲正子/著(新潮社)

元海軍大臣樺山資紀伯爵の孫にして、今、大人気の白洲次郎氏の奥方。内容は、奈良県宇陀の森野薬草園のこと、吉野川上村の筋目の者、近江永源寺に近い小椋谷の木地師にして、全国の木地師の総元締めの小椋氏、弘法大師が高野山を開くに当たり聖地を教えたとされる丹生の明神が祀られている丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)、私の配偶者の里 葛城の辺りのことなど。私の身近なところや、興味のあることがふんだんに出てきていて飽きない一冊でした。(K)


『恋文』連城三紀彦/著 新潮社

8年前に読み、温かな気持ちになったのを覚えています。先日読み返したところ、色褪せることのない物語で、再び登場人物を愛おしく思いました。家を出ていく夫が妻子へ残した絵、余命を知り昔の恋人へ書いた手紙、父母想いの息子が雑誌に投稿した相談、そして愛する夫へ渡した離婚届。物語の4つのラブレターには、それぞれ溢れんばかりの愛情が詰まっています。短編5作品の一冊です。(N)


『ソフィアの白いばら』八百板洋子/著 福音館書店

ブルガリア民話の翻訳者として知られる著者の若き日のソフィア留学体験記です。ベルリンの壁はまだ在り、ベトナム戦争真っ只中の1970年、留学生宿舎で出会ったのは、ルーマニアやベトナムなど世界中から来た若者たちでした。突然、連絡を絶ったルームメイトは西ドイツへ亡命し、将来を誓い合ったベトナム人医師は戦火の中で帰らざる人に。激動の時代、歴史の波に翻弄されながらも、力強く生きた仲間との出会いと別れをみずみずしく描きます。